「いしかわ多胎ネット」発足趣意書
医療技術の発達などによって、日本における多胎出産の割合は、戦後上昇し続けてきました。石川県は、2002年の多胎児出産が出産1000件あたり14件と全国一でした。しかし、多胎児の妊娠・出産には、単胎の場合に比べて高いリスクが伴いますし、出産後の育児負担も非情に厳しく、場合によっては、虐待を誘発するような状況に置かれる可能性も高いのが実態です。そうした状況の下、これまで、主に多胎児保護者がイニシアティヴをとって、さまざまな多胎育児グループや多胎育児支援グループが作られてきました。これに呼応する形で、各保健所において多胎妊婦教室が開催されるようになり、また1998年には『双子育児のQ&A』(風っ子KIDS)というリーフレットが作成され、各方面で利用されています。さらには同年、石川県厚生部が中心となって『多胎児の育児実態調査』を実施しています。これは多胎児家族及び行政・医療機関の両面から多胎児家庭の支援の実情を調査したものであり、県単位で行われた調査としての先駆的な取り組みとして、各方面から高く評価されています。その成果として『ふたごの妊娠出産日記』(石川県)が作成され、広く配布されています。
一方、多胎児に関する学術研究も最近では石川県立看護大学や金沢大学などにおいて盛んになされており、これを受けて、2005年1月には「日本双生児研究学会第19回学術講演会」が石川県女性センターで開催されました。
石川県においては、以上のような経緯を背景とし、行政、育児支援関係者、研究者がバランスのよい形で、多胎を巡る諸問題に取り組む機運が高まっています。他方、多胎にかかわる多様な関係者を有機的に結ぶネットワークの必要性は、さまざまな局面で叫ばれているものの、地域を基盤とした地方におけるネットワーク組織はいまだ存在しません。その意味でも、石川県において、多胎にかかわる関係者をつなぐネットワーク組織を設立し、多胎を巡る種々の問題を的確に把握し、問題解決に向かって必要な対策を講じていく意義は、極めて大きいと思われます。そうしたネットワーク組織の存在は、石川県下における多胎児保護者や多胎児本人の福祉の向上だけではなく、全国各地における同じような動きに対する大きな刺激、あるいは先行例になるからです。
私どもは、以上の趣旨のもと「いしかわ多胎ネット」を設立することにいたしました。つきましては、別紙のご案内のように、設立総会および記念講演会を開催いたしますので、ご賛同いただける方のご出席をお願いいたします。併せて、「いしかわ多胎ネット」へのご参加をお願いいたします。 2005年5月30日
<設立発起人>(50音順)
朝本 明弘 (石川県立中央病院産科)
市川 利江 (風っ子KIDS)
大木 秀一 (石川県立看護大学)
加藤 和子 (日本助産師会石川県支部)
亀本 信子 (ニコニコくらぶ)
河原 広子 (NPO法人 かもママ)
久保 実 (石川県立中央病院小児科)
玄田 朋恵 (小松地区 育児サポーター)
坂本 千佳 (子育て生活応援団)
佐藤 和夫 (風っ子KIDS)
志村 恵 (金沢大学)
生地 洋子 (ぷちっこ)
橘 薫 (風っ子KIDS)
中谷 義則 (風っ子KIDS)
中村 美香 (ミントクラブ)
能登 佐 (石川県立中央病院名誉院長)
道厘 敦子 (風っ子KIDS)
盛永 良子 (ぐりとぐら)
谷内 迪子 (いしかわ子育て支援財団)
<いしかわ多胎ネット 沿革>
平成16年 9月 石川県立看護大学 多胎児家庭への育児支援事業 開始
平成17年 1月 金沢市にて日本双生児研究学会 開催(大会会長 金沢大学志村先生)
平成17年 2月 上記をきっかけに石川県庁が主体となり、各関係者に呼びかけを 行い「多胎ネット」設立に向け、打ち合わせ
平成17年 7月 いしかわ多胎ネット設立総会・記念講演(理事:8名)
平成19年 5月 ピアサポート(先輩ママ訪問)事業開始
平成22年 2月「手をつなごう多胎ファミリー」冊子を発行」
平成24年 2月 NPO法人設立登記(理事:10名)